頭痛
頭痛
日常的に頭痛に悩まされている、いわゆる「頭痛持ち」の方は多くいらっしゃいます。つらくても「頭痛くらいで…」と軽視し、医療機関を受診せずに市販薬で対処している方も少なくありません。
頭痛外来は、そのようなつらい頭痛に悩む方々のための専門窓口です。様々な頭痛症状に対して、医学的な診察、検査、診断、そして適切な薬の処方を行います。気になる頭痛、慢性的な頭痛、いつもと少し違う頭痛など、どんな症状でもお気軽にご相談ください。
「別の病気が原因で頭痛が起こること」を二次性頭痛といいます。
二次性頭痛には、頭頚部血管障害(脳出血・脳梗塞・可逆性脳血管攣縮・血管解離など)、脳腫瘍、急性緑内障発作、細菌性髄膜炎、脳炎などの治療機会を逃すと危険な頭痛が含まれます。また、貧血、甲状腺機能亢進症、睡眠時無呼吸症候群、副鼻腔炎、うつ病による頭痛なども二次性頭痛に分類されます。
以下のような症状が伴う場合には、二次性頭痛の可能性を考え、精密検査を受けてください。
「頭痛持ち」と自認している方の多くは、一次性頭痛のいずれかに該当します。頭痛の性質、持続時間、随伴症状などに基づいて、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛などに分類されます。
一次性頭痛は生命を脅かすものではありませんが、生活の質や生産性を著しく低下させる可能性があります。頭痛によって「学校や仕事のパフォーマンスが落ちる」「欠席や欠勤をしてしまう」といった状況に陥る場合、適切な投薬を受けて頭痛をコントロールする必要があります。当院では、HIT-6やMIBS-4などの客観的評価ツールを用いて、頭痛が日常生活に及ぼす影響を詳細に分析しています。「頭痛持ちは普通のこと」「自分は頭痛持ちだから仕方ない」と諦めている方も、頭痛を客観的に見直し、適切な治療を受けることで、生活の質を大幅に改善できる可能性があります。
片頭痛という名称は頭の片側が痛むことに由来しますが、両側に痛みを感じる方もいます。この種の頭痛は女性に多い傾向があります。
片頭痛の特徴として、頭痛の前に「前兆」と呼ばれる症状が現れることがあります。例えば、キラキラとした光や、ギザギザの光が見えるといった視覚的な異常です。この前兆は通常60分以内に消失し、その後に頭痛が始まります。頭痛はズキンズキンと脈打つような痛みで、吐き気、嘔吐、眠気を伴うこともあります。また、光、音、匂いに対して過敏になることもあります。片頭痛の発作は通常4〜72時間続きますが、症状が消えると日常生活に支障なく戻れます。
片頭痛の発生メカニズムは、様々な要因により痛覚を伝える三叉神経から痛みの原因物質が放出され、血管拡張や炎症が引き起こされると考えられています。片頭痛発作の誘因は個人差が大きく、ストレス、ストレスからの解放、月経、天候の変化、光、音、匂い、運動、性的活動、旅行、食事の抜き、アルコール、特定の食品など多岐にわたります。
片頭痛の治療には、発作時の痛みを速やかに和らげる急性期治療と、発作の頻度を減らす予防療法があります。近年、片頭痛治療薬の開発が進み、2021年には従来の主流薬であるトリプタン製剤に加え、CGRP関連予防薬3剤(ガルカネズマブ、フレマネズマブ、エレヌマブ)が相次いで認可されました。これらの新薬は片頭痛の痛みを最小限に抑える効果が期待されています。
緊張型頭痛は最も一般的な頭痛の種類です。主に後頭部、こめかみ、額を中心に、頭重感や圧迫感、あるいは締め付けられるような痛みがじわじわと広がり、しばらく持続します。目の奥に痛みを感じることもあります。
この種の頭痛は、筋肉の緊張(血行障害)、精神的・肉体的ストレス、疲労、自律神経の乱れなどが原因で起こります。デスクワークや運転手など、長時間同じ姿勢を保つ職種の方に多く見られます。
パソコン作業や車の運転など、長時間前かがみやうつむき加減の姿勢を続けると、頭、首、肩の筋肉に負担がかかり、血流が悪くなって頭痛を引き起こしやすくなります。肩こりを感じたら、軽いストレッチを行い、頭痛の予防に努めましょう。
群発頭痛の特徴は、片側の目の奥に激烈な痛みが生じることです。一定期間に集中して発作が起こるため「群発」と呼ばれています。通常、年に1〜2回程度発症し、群発期には1回につき数十分から2時間程度の激しい痛みが生じ、これが1〜2カ月にわたって続きます。1日に複数回発作が起こることもあります。比較的まれな疾患で、男性に多く見られる傾向があります。
群発頭痛の発症メカニズムは完全には解明されていませんが、血管の拡張が関与していると考えられています。痛みが非常に強く、日常生活や仕事に大きな支障をきたすことが多いため、適切な治療によるコントロールが極めて重要です。
片頭痛は小学生の3.5%、中学生の5%、高校生の16%に見られると報告されており、決して珍しい症状ではありません。小児の場合、成人に比べて両側性の頭痛が多く、持続時間が短い傾向があります。治療は以下のように行います。
片頭痛が発症した場合、暗く静かな部屋で休養します。頭痛の初期段階で適切な鎮痛薬を服用します。小児の鎮痛薬は主にアセトアミノフェンやイブプロフェンですが、効果が不十分な場合はトリプタンが適応となります。頭痛の診療ガイドライン2021によると、12歳以下ではスマトリプタン点鼻薬とリザトリプタン、思春期ではスマトリプタン、リザトリプタン、エレトリプタンなどが推奨されています。
まず生活習慣の見直しが重要です。規則正しい睡眠と食事、ブルーライトの制限、特定の食品の回避、ストレス管理などが挙げられます。適度な運動、ストレッチ、マッサージも効果的です。頻度が高く日常生活に大きな支障をきたす症例では、シプロヘプタジン、アミトリプチリン、ロメリジンなどの予防薬を使用します。抗CGRP関連抗体薬は、2024年10月時点で小児(18歳未満)への適応はありませんが、一部の医療機関で治験が実施されています。ご希望の方はご相談ください。
片頭痛は投薬、栄養管理、ライフスタイルの変更、ストレス管理により予防が可能です。頭痛の頻度が高い場合や重症度が高い場合は、積極的な予防策が必要となります。
片頭痛の予防薬には、塩酸ロメリジン(ミグシス)、バルプロ酸(セレニカ、デパケン)、アミトリプチリン(トリプタノール)、プロプラノロール、呉茱萸湯などの漢方薬があります。また、抗CGRP関連抗体薬(エムガルティ、アジョビ、アイモビーグ)も予防薬の一種です。痛みがない時期も含めた継続的な投薬により、頭痛の頻度と重症度を軽減できます。
バランスの取れた食事と適切な水分摂取が重要です。特に、日本人に不足しがちな鉄分には頭痛予防効果があり、積極的な摂取が推奨されます。(参考:Front Nutr. 2021)厚生労働省の食事摂取基準2020によると、月経のある日本人女性は1日11mg、過多月経の場合は16mgの鉄分摂取が推奨されています。さらに、マグネシウムとリボフラビン(ビタミンB2)も片頭痛の予防に効果的だと報告されています。
十分な睡眠と規則正しい生活リズム、適度な運動、リラクゼーション、ストレス軽減が大切です。頭痛体操も効果的な予防法の一つです。
近年、片頭痛の病態解明が進み、CGRPという物質が片頭痛の発症に関与することが明らかになりました。エムガルティ(ガルカネズマブ、抗CGRP抗体薬)はCGRPの作用を抑制し、片頭痛を効果的に予防する新世代の薬剤です。
これらの条件に当てはまる場合、CGRP関連抗体薬による「予防治療」が適応となる可能性があります。
多くの患者さんが治療開始から1ヶ月で効果を実感しており、約6割の方で頭痛の頻度が半減し、約1割の方では頭痛が完全に消失します。投薬は月1回の皮下注射で行います。保険適用後の窓口負担は1回の注射につき約13,000円(元価格は約45,000円)です。付加給付制度などの医療費補助を利用できる場合もありますので、詳細についてはお気軽にご相談ください。