CGRP関連薬について|頭痛・認知症もりた脳神経クリニック|神戸市東灘区の脳神経外科

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CGRP関連薬について

CGRP関連薬について|頭痛・認知症もりた脳神経クリニック|神戸市東灘区の脳神経外科

CGRP関連薬とは、どのようなお薬ですか?

片頭痛が起こるとき、頭の感覚をつかさどる三叉神経の末端からCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質が放出され、血管を広げ、炎症を起こして痛みの信号を強めます。片頭痛の患者さんではCGRPの血中濃度が高いことや、CGRPを注射すると発作が誘発されることも確かめられています。このCGRPの働きを止めるお薬が、CGRP関連薬です。止め方によって3つのタイプに分かれます。

CGRP片頭痛薬の仕組み。CGRPを直接捕まえる注射、受容体を塞ぐ抗体注射、受容体を小さな分子で塞ぐ飲み薬という3つの作用機序の図解

  • CGRPそのものを捕まえる抗体 ── エムガルティ、アジョビ(いずれも注射)
  • CGRPの受け皿(受容体)をふさぐ抗体 ── アイモビーグ(注射)
  • CGRPの受け皿を小さな分子でふさぐ飲み薬 ── ナルティーク、アクイプタ(「ゲパント」と呼ばれます)

抗体は分子が大きくゆっくり分解されるため、月1回程度の注射で効果が続きます。ゲパントは分子が小さく飲み薬にできる一方、体から早く抜けるため毎日または1日おきに飲みます。この性質の違いが、そのまま使い方の違いになっています。

なお、いずれも18歳以上の方が対象です。妊娠中の方には原則として使用しません。授乳中の方については、一律に使えないわけではありません(詳しくは下の「よくある質問」をご覧ください)。

日本で使える5剤の整理

注射のお薬(抗体薬)3剤

お薬の名前
(一般名)
使い方 特徴
エムガルティ
(ガルカネズマブ)
初回に2本、その後は月1回1本を皮下注射 初回に多めに投与する用法のため、1回目の投与で目標の血中濃度に達します
アジョビ
(フレマネズマブ)
4週間ごとに1本、または12週間ごとに3本を皮下注射 投与間隔を選べます。3か月に1度の通院でも続けられます
アイモビーグ
(エレヌマブ)
4週間ごとに1本を皮下注射 他の注射薬と異なり、CGRPの受け皿(受容体)に作用します
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飲み薬(ゲパント)2剤

お薬の名前
(一般名)
使い方 特徴
ナルティーク
(リメゲパント)
発作が起きたときに1錠、または予防として1日おきに1錠 日本で唯一、発作時の治療と予防の両方に使えるお薬です
アクイプタ
(アトゲパント)
1日1回1錠 予防に特化したお薬です。1日1回という分かりやすい飲み方です
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ナルティークは2025年12月、アクイプタは2026年4月に発売されたばかりの新しいお薬です。発売から一定期間は、1回の処方が14日分までに制限されています(ナルティークは2026年11月末まで、アクイプタは2027年4月末まで)。この期間は、2週間ごとの受診が必要になります。

学会は「第一選択のひとつ」に位置づけています

2025年10月27日、日本頭痛学会は、CGRP関連抗体薬を「すでに国内で承認されている他の片頭痛予防薬(CGRP受容体拮抗薬を含む)と同等に、成人の予防療法の第一選択薬に含めることを推奨する」というポジションステートメントを発表しました。

大切なのは「同等に」「含める」という言葉です。従来薬より優れているという意味ではなく、従来の予防薬(プロプラノロール、バルプロ酸、ロメリジンなど)と同じ土俵に並べてよい——つまり、先に従来薬を試さなければならないという順番の縛りを外してよい、という意味です。

海外も同じ方向です。欧州頭痛連合は2022年、それまで「2剤以上が効かなかった方への第3選択」としていたCGRP抗体薬を第一選択へ格上げし、「開始を遅らせることは、患者に早い利益をもたらさないばかりか、片頭痛を慢性化させる可能性もある」と述べています。米国頭痛学会も2024年に同様の声明を出しました。

ただし、保険診療の実際とは少し差があります

注射の抗体薬3剤は、厚生労働省の「最適使用推進ガイドライン」に沿って使うため、今も次のすべてが必要です。

  • 片頭痛の診断が確認されている
  • 治療開始前3か月以上、1か月の片頭痛日数が平均4日以上ある
  • 生活面の工夫と発作時の治療をすでに行っても、日常生活に支障がある
  • 従来の予防薬のいずれかが、効果不十分・副作用で続けられない・持病のために使えない、のいずれかにあたる

つまり注射薬は、学会が「第一選択に含めてよい」とする一方、保険診療上は従来薬を一度試すことが前提になっています。

一方、飲み薬(ゲパント)にはこの要件がありません。ナルティーク・アクイプタは最適使用推進ガイドラインの対象外で、従来薬を先に試す要件がありません。「予防治療を早く始めたい」という方には実際的な違いになります。

どのお薬を選ぶか ── 当院の考え方

まず率直にお伝えします。どのCGRP関連薬が一番効くのか、という問いに答えられるデータは、まだありません。5剤を直接比べた試験が行われていないためです。国際頭痛学会とイタリア頭痛学会が2025年に発表した診療ガイドラインも、薬剤同士を直接比較した試験が不足していることを、今後の研究課題としてはっきり挙げています。日本人を対象とした実地診療のデータでは、注射薬3剤の効果はほぼ同じ程度と報告されています。

ですから下の表は、効果の優劣ではなく、その方の状況との「相性」の目安としてご覧ください。当院では、こうした観点をお一人おひとりとすり合わせながらお薬を選んでいます。

こんなとき 選択肢の一例 理由
早く効果を実感したい エムガルティ 初回に2本投与するため、1回目で目標の血中濃度に達します
通院の回数を減らしたい アジョビ 12週間ごとに3本という投与法を選べます
注射部位の反応が気になる アイモビーグ 日本人の試験では注射部位の反応が目立ちませんでした。ただし便秘に注意
注射に抵抗がある
すぐに始めたい
アクイプタ 1日1回の内服のみ。従来薬を先に試す要件もありません
発作時の薬が月10日以上 ナルティーク 他の急性期治療薬の使用日数を減らすことができます。
トリプタンが合わない ナルティーク トリプタン特有の血管収縮による副作用が少ないお薬です
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当院では、アイモビーグはアジョビやエムガルティから切り替える形でお使いいただくことが多くなっています。1剤目で十分な効果が得られない場合や副作用が気になる場合に、別のお薬へ切り替える選択肢があることも知っておいていただければと思います。

なお、飲み薬2剤(ナルティーク・アクイプタ)の詳しい使い分けは、「飲み薬のCGRP関連薬(ナルティーク・アクイプタ)について」のページでご説明しています。

費用と治療の続け方

費用の目安

健康保険が使えるお薬です。3割負担の方の場合、5剤いずれも1日あたりおよそ420〜440円、1か月あたり12,000〜13,000円ほどの窓口負担が目安です(2026年7月時点の薬価による概算)。

お薬 1か月あたりの窓口負担(3割負担)
エムガルティ(月1回) 約12,700円 ※初月のみ2本で約25,400円
アジョビ(4週ごと) 約11,700円
アイモビーグ(4週ごと) 約11,700円
ナルティーク(予防・1日おき) 約13,200円
アクイプタ(1日1回) 約13,200円
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決して安い治療ではありません。日本頭痛学会も「治療コストは依然として高く、医療経済的な観点も無視できない」として、費用と治療目標を患者さんと医療者で共有し、現実的な計画を立てることを求めています。当院も同じ考えです。次のような点も併せてお考えいただければと思います。

  • 発作時の薬の費用や、頻回の受診にかかる交通費が減ること
  • 仕事・家事・育児・勉強に取り組める日が増えること
  • ご家族との時間や、予定を立てられる安心感が戻ること

また、3か月を目安に効果を評価し、改善がない場合や、頭痛が落ち着いて支障がなくなった場合には中止を検討します。「一度始めたら一生」というお薬ではありません。

付加給付制度について

加入している健康保険組合によっては、付加給付制度が活用できる可能性があります。1ヶ月あたりの自己負担額の上限が設定されており、それ以上の負担分の還付を受ける事ができます。対象になる可能性のある方は以下。

  • CGRP関連抗体薬の在宅自己注射の方
  • アジョビを12週毎に3本投与している方

在宅自己注射について

注射薬で効果が得られた方には、ご自宅での自己注射をおすすめしています。当院で注射の手技、清潔な取り扱い、使用済み注射器の廃棄方法まで指導します。慣れてしまえば難しい操作ではありません。

メリット

  • 通院回数の削減による負担軽減
  • 決まった間隔での投与スケジュールを保ちやすい
  • 仕事や日常生活に合わせた柔軟な投与時間の設定が可能

よくある質問・これからの治療

Q. CGRP関連薬は、誰でも使えますか?

いいえ。18歳以上で、片頭痛の診断が確認されていて、1か月あたりの片頭痛日数が平均4日以上ある方が対象です。妊娠中の方には原則として使用しません。妊娠をお考えの方は、注射薬が体内に約1か月残るため、中止の時期を含めて早めにご相談ください。また注射薬については、従来の予防薬を一度お試しいただくことが保険診療上の前提になっています(飲み薬にはこの要件がありません)。

Q. 注射と飲み薬、どちらがよいですか?

一概にどちらが良いとは言えません。5剤を直接比べた試験が行われていないためです。通院の頻度をどうしたいか、注射に抵抗があるか、発作時のお薬も兼ねたいか、すぐに始めたいか——といった点をうかがいながら、ご一緒に選んでいきます。

Q. 授乳中ですが、使えますか?

「授乳中だから使えない」とあきらめる必要はありません。CGRP関連薬は、注射・飲み薬のいずれも、授乳を一律に禁じられているお薬ではありません。治療の必要性と母乳育児の利点を比べたうえで、授乳を続けるか中止するかをご一緒に判断していきます。

特に飲み薬2剤(ナルティーク・アクイプタ)は、母乳へ移る量が実際に測定されており、いずれもごくわずかであることが確認されています。ただし、お子さんの月齢によって考え方が変わり、新生児や早産のお子さんでは別のお薬を優先することもあります。授乳中で片頭痛にお困りの方は、どうぞ一度ご相談ください。

これからの治療

CGRP関連薬を使っても十分な効果が得られない方もいらっしゃいます。そこで、CGRPとは別の経路である「PACAP」という物質を標的とする抗体の開発が海外で進んでおり、2026年には、これまでの予防薬が効かなかった患者さんを対象とした試験で良好な結果が報告されました。ただし現時点では点滴での投与で、より大規模な試験はこれからの段階です。日本でも試験は行われていますが、承認はされていません。

CGRP関連薬が登場して5年。片頭痛の治療は今も動いています。当院では最新の情報を追いかけながら、その時点で最も適した選択肢をご提案できるよう努めています。

当院での頭痛予防治療について

もりた脳神経クリニックでは、脳神経外科・脳神経内科の専門性を軸に、片頭痛の予防治療に取り組んでいます。診断の確認から始め、5剤すべてと従来の予防薬を含めて選択肢を並べ、一緒に決めていきます。他院で治療中の方の継続・切り替えのご相談にも対応します。

「予防薬をすすめられたが迷っている」「効果が今ひとつで続けるか悩んでいる」という段階のご相談も歓迎します。治療目標の設定から、一緒に始めましょう。

参考文献

  • 成人の片頭痛予防療法におけるCGRP関連抗体薬の使用に関するポジションステートメント 2025年(日本頭痛学会)
  • 頭痛の診療ガイドライン2021(日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会)
  • CGRP関連抗体薬による片頭痛予防のガイドライン 2022年改訂版(欧州頭痛連合)
  • CGRP標的治療は片頭痛予防の第一選択である 2024年(米国頭痛学会)
  • 片頭痛の薬物治療に関するエビデンスに基づくガイドライン 2025年(国際頭痛学会・イタリア頭痛学会)
  • 最適使用推進ガイドライン ガルカネズマブ(厚生労働省)、および各薬剤の添付文書