飲み薬のCGRP関連薬(ナルティーク・アクイプタ)について
飲み薬のCGRP関連薬(ナルティーク・アクイプタ)について

片頭痛の予防薬というと、これまでは月1回の注射が中心でした。しかし2025年12月にナルティーク、2026年4月にアクイプタが発売され、飲み薬で片頭痛を予防するという選択肢が加わりました。「注射には抵抗がある」「もっと手軽に始めたい」という方にとって、現実的な選択肢です。
この2剤は、CGRPという物質の「受け皿(受容体)」を小さな分子でふさぐお薬で、まとめて「ゲパント」と呼ばれます。注射薬(抗体薬)が分子の大きな抗体で、ゆっくり分解されるため月1回の注射で効果が続くのに対し、ゲパントは分子が小さいため飲み薬にできる一方、体から早く抜けます。この性質の違いが、そのまま使い方の違いです。
もうひとつ、実務的な利点があります。注射の抗体薬3剤は厚生労働省の「最適使用推進ガイドライン」に沿って使うため、原則として従来の予防薬を一度試したうえで使うことになっています。一方、飲み薬2剤にはこの要件がありません。「予防治療を早く始めたい」という方には、実際的な違いになります。
CGRP関連薬の全体像(注射3剤を含む5剤の比較や費用)は、「CGRP関連薬について」のページをご覧ください。
ナルティークは、日本で唯一、片頭痛の「発作が起きたときの治療」と「予防」の両方に使えるお薬です。発作時には痛くなったときに1錠、予防としては1日おきに1錠を服用します。口の中で溶けるタイプの錠剤なので、水がなくても飲めます。
トリプタン系のお薬で効果が不十分だった方や、副作用で使用できない方を対象とした臨床試験では、ナルティークの服用により、プラセボ(偽薬)と比較して有意に高い割合で頭痛が改善されました(服用2時間後の改善率:ナルティーク55.9% vs プラセボ32.7%)。また、副作用の発現率はプラセボと同程度で、安全性も確認されています。
(参考文献:Rimegepant for acute treatment of migraine in triptan-unsuitable adults: A randomized, double-blind, placebo-controlled phase 4 trial. Cephalalgia. 2025;45(11):3331024251395298.)
トリプタンは血管を収縮させる働きがあるため、心臓や血管に不安のある方では使いにくいことがあります。ナルティークはこの血管収縮による副作用が少ないお薬です。
発作時のお薬を月に10日以上使う状態が続くと、かえって頭痛が慢性化する「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」を招くことがあります。ナルティークは発作時にも予防にも使えるため、他の急性期治療薬の使用日数を減らすことができます。
なお、これまでの臨床試験でナルティーク自体がこの問題を起こすという所見は報告されていません。ただしこれは「起こさないことが証明された」という意味ではなく、「今のところ確認されていない」という段階の情報です。お薬の使い方は、医師と相談しながら決めていきましょう。
アクイプタは片頭痛の予防に特化したお薬で、1日1回1錠を服用します。発作時の治療には使いませんが、その分「毎日決まった時間に1錠」というシンプルな飲み方で続けられます。
腎臓の働きが低下している方や、一部のお薬を併用している方では、量を調整します。診察の際に、現在お飲みのお薬をお知らせください。
| ナルティーク (リメゲパント) |
アクイプタ (アトゲパント) |
|
|---|---|---|
| 使える場面 | 発作時の治療 と 予防の両方 | 予防のみ |
| 飲み方 | 発作時に1錠/予防は1日おきに1錠 | 1日1回1錠 |
| 向いている方 | 発作時の薬も兼ねたい方、トリプタンが使いにくい方 | 予防をシンプルに続けたい方 |
どちらが優れているというものではありません。発作時のお薬も兼ねたいのか、予防に集中したいのか、生活のリズムに合うのはどちらか——といった点をうかがいながら、ご一緒に選んでいきます。

月経の前後に決まって片頭痛が起こる方に対して、その時期にあわせてナルティークを使う方法が海外で報告されています。
ただし現時点で報告されているのはごく少数の患者さんを対象とした研究にとどまり、発作が起こる時期が後ろにずれただけというケースも含まれていました。研究者自身も、きちんとした比較試験が必要だと述べています。
(参考文献:Rimegepant for the Short-Term Prophylaxis of Menstrual Migraine: A Real-World Study. J Headache Pain. 2025;26(1):253.)
また、日本ではこうした使い方は承認された用法ではありません。月経に関連する片頭痛でお困りの場合は、予防薬の使い方を含めて診察でご相談ください。
どちらも発売されて間もない新しいお薬のため、一定期間は1回の処方が14日分までに制限されています(ナルティークは2026年11月末まで、アクイプタは2027年4月末まで)。この期間は2週間ごとの受診が必要ですが、制限が解除されれば、より長い期間の処方が可能になります。
健康保険が使えます。3割負担の方の場合、予防として服用した場合で1か月あたり約13,200円(1日あたり約440円)が目安です。ナルティークを発作時のみ使う場合は、1回あたり約880円です(2026年7月時点の薬価による概算)。
妊娠中の方には、原則として使用しません。治療の必要性がどうしても高い場合に限り、医師とご相談のうえで慎重に検討します。
授乳中の方は、「使えない」とあきらめる必要はありません。CGRP関連薬は、飲み薬・注射のいずれも、授乳を一律に禁じられているお薬ではありません。治療の必要性と母乳育児の利点を比べたうえで、授乳を続けるか中止するかをご一緒に判断していきます。
特に飲み薬2剤(ナルティーク・アクイプタ)は、母乳へ移る量が実際に測定されており、いずれもごくわずかであることが確認されています。ただし、お子さんの月齢によって考え方が変わり、新生児や早産のお子さんでは別のお薬を優先することもあります。授乳中で片頭痛にお困りの方は、どうぞ一度ご相談ください。
副作用として比較的多いのは、吐き気や便秘です。気になる症状が出た場合は、次の受診を待たずにご連絡ください。
もりた脳神経クリニックでは、飲み薬2剤を含むCGRP関連薬5剤すべてに対応しています。片頭痛の診断の確認から始め、注射薬・飲み薬・従来の予防薬を並べたうえで、ご一緒に選んでいきます。注射薬から飲み薬への切り替え、他院で治療中の方の継続のご相談にも対応します。
「注射はためらうけれど、予防治療は始めたい」という方は、どうぞお気軽にご相談ください。