CGRP関連抗体薬について|頭痛・認知症もりた脳神経クリニック|神戸市東灘区の脳神経外科

〒658-0053兵庫県神戸市東灘区住吉宮町3丁目8-3
078-856-0234
WEB予約
ヘッダー画像

CGRP関連抗体薬について

CGRP関連抗体薬について|頭痛・認知症もりた脳神経クリニック|神戸市東灘区の脳神経外科

CGRP関連抗体薬について

2021年、片頭痛を引き起こす原因の一つであるCGRPという物質に作用する新薬が発売されました。片頭痛の予防に特化した薬で、効果が強く、副作用が少ないことが特徴です。治療を始めて最初の1週間から「頭痛が減った、軽くなった」と感じ、1ヶ月後には頭痛日数が半減することが期待出来ます。

エムガルティ、アジョビ、アイモビーグの3種類があり、効果はほぼ同等と考えられます。主な副作用である局所部位反応や便秘の発生率や投与間隔、投与器具に若干の違いがありますので、医師と相談の上で最適なものを選んでいただくことができます。

日本では1剤以上の片頭痛予防薬を試して効果がない方へ使用されていますが、ヨーロッパやアメリカのガイドラインでは、片頭痛予防薬で最初に考えるべき薬(第1選択薬)の一つとされています。

なぜこれらの薬が効果があるのか

片頭痛が生じるメカニズムは「三叉神経血管説」で説明されています。三叉神経は顔面や頭の感覚を脳に伝える役割のある神経で、脳血管や硬膜血管にも分布しています。何らかのきっかけで三叉神経が刺激されると、三叉神経終末からCGRP (Calcitonin gene-related prptide) などの物質が放出されます。CGRPなどの物質は血管拡張や炎症を引き起こし、頭痛を引き起こすというものです。

従って、片頭痛を引き起こす原因物質の一つであるCGRPの働きを抑えることで片頭痛を発生しづらくすることができます。

どのような方に適応があるか

  • 頭痛の日が4日以上ある
  • 頭痛で日常生活に支障がある
  • 従来の経口予防薬が効果がない、または使えない(副作用、禁忌など)

CGRP関連抗体薬は従来の経口予防薬に比較して効果が高く、副作用が少ないと考えられます。従来の経口予防薬(バルプロ酸、プロプラノロール、塩酸ロメリジンなど)との併用も可能です。最適使用ガイドラインや頭痛学会からの情報を参考にします。

なお、18歳未満の小児、妊娠中や授乳中の方への使用はできません。

治療に係る費用について

CGRP関連抗体薬は3割負担の方で、1本あたり12,000~13,000円程度の窓口負担があります。他の片頭痛予防薬に比較して高額です。CGRP関連抗体薬にこれだけの価値があるかについては、片頭痛治療にかかる直接・間接経費、お金に変えられない経費を考慮して考えます。

直接・間接経費の減少

  • 急性期治療薬(トリプタンやNSAIDs、市販薬など)にかかる費用
  • 頻回な受診やそれに伴う交通費

治療により得られる賃金や価値

  • 労働生産性が向上することで得られる賃金
  • 仕事・勉強・家事・育児などのお金に換算できない価値
  • 家族や周囲の人との人間関係への好影響
  • 精神的負担の軽減

付加給付制度について

加入している健康保険組合によっては、付加給付制度が活用できる可能性があります。1ヶ月あたりの自己負担額の上限が設定されており、それ以上の負担分の還付を受ける事ができます。対象になる可能性のある方は以下。

  • CGRP関連抗体薬の在宅自己注射の方
  • アジョビを12週毎に3本投与している方

在宅自己注射について

CGRP関連抗体薬の効果がある方は、在宅自己注射での継続をお勧めしています。導入に際しては自己注射の手技、清潔操作、使用済み注射器の適切な破棄の方法について説明・指導を行っています。

メリット

  • 通院回数の削減による負担軽減
  • 定期的な投与スケジュールの維持が容易
  • 仕事や日常生活に合わせた柔軟な投与時間の設定が可能

CGRP関連抗体薬3剤の比較

商品名 エムガルティ アジョビ アイモビーグ
一般名 ガルカネズマブ フレマネズマブ エレヌマブ
投与方法 皮下注
初回240mg(2本) →
 月1回120mg (1本)
皮下注
2パターンから選択できる

  • 4週毎に1本
  • 12週毎に3本
皮下注
4週毎に1本
液量 1ml 1.5mg 1.0ml
自己注射 可(4週に1回のみ)
半減期 23~30日 約30日 28日
副作用 注射部位反応 10%
便秘 1-2%
注射部位反応 4-5%
便秘 0.5%未満
注射部位反応 5-6%
便秘 10.3%
長所
  • 初回2本投薬により定常状態まで血中濃度を上昇させ、早期の有効性に期待できる。
  • 「光音過敏、悪心嘔吐の改善」「発作間欠期症状(MIBS-4)の改善」の報告あり
  • 群発頭痛にも有効(本邦 未承認)
  • 投与スケジュールの柔軟さ
  • 「1週目から効果あり」「仕事、学習、家事などを遂行する機能向上」の報告あり。
  • 唯一「CGRP受容体」に対する抗体。
  • 完全ヒト抗体のため、免疫原性の可能性が低い
デメリット
  • 薬価が少し高い (初年度)
  • 注射部位反応がやや多い
便秘がやや多い

スクロールできます