
CGRP関連抗体薬について
CGRP関連抗体薬について
2021年、片頭痛を引き起こす原因の一つであるCGRPという物質に作用する新薬が発売されました。片頭痛の予防に特化した薬で、効果が強く、副作用が少ないことが特徴です。治療を始めて最初の1週間から「頭痛が減った、軽くなった」と感じ、1ヶ月後には頭痛日数が半減することが期待出来ます。
エムガルティ、アジョビ、アイモビーグの3種類があり、効果はほぼ同等と考えられます。主な副作用である局所部位反応や便秘の発生率や投与間隔、投与器具に若干の違いがありますので、医師と相談の上で最適なものを選んでいただくことができます。
日本では1剤以上の片頭痛予防薬を試して効果がない方へ使用されていますが、ヨーロッパやアメリカのガイドラインでは、片頭痛予防薬で最初に考えるべき薬(第1選択薬)の一つとされています。
片頭痛が生じるメカニズムは「三叉神経血管説」で説明されています。三叉神経は顔面や頭の感覚を脳に伝える役割のある神経で、脳血管や硬膜血管にも分布しています。何らかのきっかけで三叉神経が刺激されると、三叉神経終末からCGRP (Calcitonin gene-related prptide) などの物質が放出されます。CGRPなどの物質は血管拡張や炎症を引き起こし、頭痛を引き起こすというものです。
従って、片頭痛を引き起こす原因物質の一つであるCGRPの働きを抑えることで片頭痛を発生しづらくすることができます。
CGRP関連抗体薬は従来の経口予防薬に比較して効果が高く、副作用が少ないと考えられます。従来の経口予防薬(バルプロ酸、プロプラノロール、塩酸ロメリジンなど)との併用も可能です。最適使用ガイドラインや頭痛学会からの情報を参考にします。
なお、18歳未満の小児、妊娠中や授乳中の方への使用はできません。
CGRP関連抗体薬は3割負担の方で、1本あたり12,000~13,000円程度の窓口負担があります。他の片頭痛予防薬に比較して高額です。CGRP関連抗体薬にこれだけの価値があるかについては、片頭痛治療にかかる直接・間接経費、お金に変えられない経費を考慮して考えます。
加入している健康保険組合によっては、付加給付制度が活用できる可能性があります。1ヶ月あたりの自己負担額の上限が設定されており、それ以上の負担分の還付を受ける事ができます。対象になる可能性のある方は以下。
CGRP関連抗体薬の効果がある方は、在宅自己注射での継続をお勧めしています。導入に際しては自己注射の手技、清潔操作、使用済み注射器の適切な破棄の方法について説明・指導を行っています。
商品名 | エムガルティ | アジョビ | アイモビーグ |
---|---|---|---|
一般名 | ガルカネズマブ | フレマネズマブ | エレヌマブ |
投与方法 | 皮下注 初回240mg(2本) → 月1回120mg (1本) |
皮下注 2パターンから選択できる
|
皮下注 4週毎に1本 |
液量 | 1ml | 1.5mg | 1.0ml |
自己注射 | 可 | 可(4週に1回のみ) | 可 |
半減期 | 23~30日 | 約30日 | 28日 |
副作用 | 注射部位反応 10% 便秘 1-2% |
注射部位反応 4-5% 便秘 0.5%未満 |
注射部位反応 5-6% 便秘 10.3% |
長所 |
|
|
|
デメリット |
|
便秘がやや多い |